普通のボケと、認知症は何違うのか
物忘れがひどくなった、ついさっきのことが思い出せない。
こういう物忘れは、普通のボケ症状や、ウツ病などでも起こる。
居間や台所に来たり、冷蔵庫を開けて、「あれ、何をしようとしてたっけ」などと思った経験は誰にでもあるだろう。
また外出のために家を出たけれど、「あれ、火消したっけ」「鍵閉めたっけ」などと気になって家に戻ることもある。
バスの時刻などを気にして慌てて出かけたりすると、火の元の確認をし忘れたり、戸締まりを確認した記憶がない。
だから一度家に戻って、もう一度、確かめざるを得ないわけだ。
また、覚えていたはずのことが思い出せない、と言うタイプのボケ症状もある。
こういう場合、たいていは、何かヒントがあれば思い出せたりする。
脳というのは、情報や記憶を、使用頻度ごとに分類しているらしくて、よく使う情報や記憶は、すぐに引き出せる場所に準備している。
一方、滅多に使わない情報や記憶は、何かのヒントがないと思い出せない。
専門用語や英単語、数学や理科の公式など、覚えたはずなのに出てこないのは、こういう類いの物忘れだ。
しかしその場合でも、覚えたとか、覚える努力をしたという記憶あるから、頑張って思い出そうとするわけだ。
ところが認知症の物忘れというのは、こういう物忘れとは根本的に違うらしい。
というのも記憶自体が丸ごと消え失せていて、そういう出来事やモノがあったこと自体、「全く知らない」と言う状態なのだ。
認知症の代表的な病気の一つである、アルツハイマー病では、過去の記憶が近い過去から順番に消えていくらしい。
過去の記憶がどんどん消えるアルツハイマー病
アルツハイマー病とは、記憶がドンドン消えていく病気だ。
最初は数分前の出来事を忘れ、しばらくすると昨日のことも忘れ、病気が進んで何年もたつと、最近数年分の記憶もなくなる。
さらに進めば子供の頃の記憶しか残っていない状態になって、結婚相手や成人後に知り合った人の顔もわからなくなる。
アルツハイマーが進むと、息子や娘の顔もわからなくなるのは、ある意味当たり前って事だね。
だって息子や娘は、患者が子供の頃には、全く存在もしていなかったわけだから。
そしてしまいには自分が今どこにいて、目の前にいる人が誰なのかも、だんだん分からなくなっていく。
さて、アルツハイマー病が進んだ患者の脳を、MRIやCTスキャンで調べてみると、「海馬(かいば)」という器官が萎縮し、さらに側頭葉や頭頂葉に、萎縮が拡がっているらしい。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)などでも、海馬が萎縮したりするのだが、萎縮が他の部位にもドンドン拡がるのが、アルツハイマー病の特徴だ。
そして脳の萎縮が拡がるのに伴い、記憶がドンドン消えていく。
というのも海馬と側頭葉は、記憶を司る器官だからだ。
そして頭頂葉が萎縮すると、視空間認識もおかしくなっていく。
その結果、自分がいる場所がわからず道に迷い、家に戻ってくるのさえ難しくなる。
こういう風に、脳が壊れて、壊れた部分の能力がなくなるのが、認知症という病気だということだ。