発語における誤り
認知症の失語症の症状は、次の3つに分類できる。
- 発語における誤り
- 話し言葉の理解障害
- 物品の呼称障害
「発語」(はつご)とは、なんらかの意味を持った言葉を発するという意味だが、話そうとしても間違えてしまうのが、「発語における誤り」だ。
これは、文章を組み立てて、口から発するまでの経路が、うまく働かないと言うことらしい。
文章を組み立てるところか、口などの音声器官にそれを伝える部分に、なんからの障害が発生している。
そのため、言おうと思った言葉とまったく違った言葉が出てしまったり、言葉の並べ方が、おかしくなったりする。
また、文章を理解する能力が、うまく働いていないという場合もある。
この場合は、相手の言ってることが分からず、答えるべき言葉が見つからないってことだ。
周囲の人が何を話しているのか、話の内容を要約できないというのは、ボケ症状でも出てきた話であるが、それとは多少異なる。
というのもボケ症状の場合は、目の前の人以外の話が耳に入ってこない状態だが、失語症の場合は、話が理解できないらしい。
これもやはり「文章の組み立て方がわからない」というのに関係があると言うことなのかな。
そのため、このタイプの失語症では、人の話や文章を要約するとか、何かを説明するとか、日記を書くとか、とにかく文章を読み書きすることが失語症のリハビリになる。
- 短い小説やマンガを読んで、あらすじを書く
- 毎日、日記をつける
- 何かを他人に説明する
話し言葉の理解障害
「話し言葉の理解障害」とは、「右手で左の耳をつまんでください」と言った指示が分からない症状だ。
単語の意味は分かるが、文章になると分からない。
短い文章ならわかるが、長い文章は理解できない。
たとえばさっきの指示だと、「右手」「左耳」「つまむ」は分かるが、「右手で左耳をつまむ」が分からない。
このレベルでは、単語の意味は分かっているので、様々な文型表現をシンプルに、とにかくたくさん練習する。
動作を見せて真似ができるなら、言葉に合わせて動作を真似させる。
また4コマ漫画を説明したり、長い文章を書き写したり、コラムや短い文章の要約をしたり、日記を書くことでリハビリを行う。
最後の「物品の呼称障害」では、モノの名前や用途が分からない状態で、言葉を一つ一つ覚え直す作業が必要だ。
数字のカードを使ってゲームをしたり、言葉と実物やイラストを組み合わせるゲームをしたり、実物を使いながら名称を覚えなおす。
この辺りになると、もう幼児にモノを教えるような、非常に初歩的な作業だが、致し方がない。
というのも認知症では、神経細胞ごと記憶が失われているので、記憶は二度と蘇らない。
そのためもう一度、覚え直すしかないからだ。