感情の抑制が効かないと、言葉に詰まる
頭が真っ白になって、言葉が出てこない。
頭に何も浮かばず、フリーズして、ただ立ち尽くすのみ。
こういう事は、たいていの人が、人生で何度か経験することだろう。
ただこれには、2通りの場合がある。
一つは、ちょっと前のことを覚えていない「近時記憶」ができなくなるケース。
たった今やったことや、聞いたことを覚えていないと、言葉を選びようがなくて言葉に詰まる。
あるいはパーティや会議などで他人の話が耳に入っておらず、意見を尋ねられても何も答えられない。
どちらも現状がよく分かっておらず、それで対応に困ってしまうわけだ。
もう一つは、感情の抑制が効かないケース。
結婚式のスピーチなどで、言葉に詰まって頭が真っ白になるのは、たいていの場合、こっちのケースらしい。
これは感情が高ぶってしまって、脳を正常に動かせなくなる場合だ。
スピーチの場合は、会場の人の視線が、自分に集まって緊張してしまい、その緊張を抑えるのに手一杯になる。
何かの恐怖で身がすくんで、何にも言えなくなるのも、このパターンかもしれない。
これらは緊張や恐怖によって思考が乱され、それで言葉に詰まってしまうわけだ。
感情が高ぶって思考が乱れる原因は、感情を抑える作業と、思考する作業が、どちらも脳の同じ領域で行われているからだ。
それが「前頭葉(ぜんとうよう)」で、感情を抑えるのに忙しくなってしまうと、思考や判断・決断ができなくなってしまうのだ。
前頭葉は、一体何をするところ?
結婚式などのスピーチや、恐怖にさらされたときに、頭が真っ白になって、何も言葉が出なくなってしまう。
これは脳の前頭葉(ぜんとうよう)が、感情を抑えるのに手一杯で、思考をまとめることが、できなくなるかららしい。
脳の前頭葉は、脳の前の方にあって、頭のてっぺんから、目の奥くらいに位置する。
ここは様々な仕事をしている部分で、人間は他の動物と比べて、前頭葉の領域が非常に大きい。
この前頭葉がどういう仕事をしているかは、前頭葉に何らかの傷を負った人を観察することでわかってきた。
簡単にまとめると、次のような感じになる。
前頭葉に障害を負った人の特徴
- 精神的柔軟性や自発性が低下する。
ただしIQ は下がらない。
- 会話が劇的に増加したり、あるいは減少したりする。
- 危険管理や規則の順守に関する感覚がおかしくなる。
- 人付き合いが増える、または減る。
- 眼窩前頭野に障害を負うと、独特な性行動につながる。
- 背外側前頭野に障害を負うと、性的興味がなくなる。
そして興味深いのが、前頭葉に障害が起こっても、IQ(知能指数)が下がらないと言うところだ。
前頭葉は、モノを考える時に働くのだが、前頭葉が働かなくなったとしても、以前考えて身についたことは、無くならないらしい。
だから少々ボケても、気がつかないわけだな。