職人芸や名人芸ができても、頭はボケる
昔は得意だった事が、全くできなくなっていると、自分の衰えに気づく。
子供の時は軽々できたことが、大人になると全然できなくて、「もう子供じゃないんだな」などと思った経験は誰にでもあるだろう。
若い頃はへっちゃらだったことも、だんだん身体に堪えるようになって、「もう若くないんだ」と感じることも、多くの人が経験することだ。
こういう風に、自分自身の衰えは、「久しぶりにやってみたら、全くできなくなっていた」ということで自覚することが多い。
だからボケ症状が進んでいても、変化を痛感する機会がないと、自分がボケていることを自覚できない。
一方、日常生活というのは、歳をとればとるほど変化がなくなる。
生活にも仕事にも新鮮味がなくなり、同じ事の繰り返しになりがちだからだ。
学んだり練習したり経験を積んで、技術やスキルが上がれば、仕事はだんだん楽になる。
何度も同じ事を繰り返せば、脳はその手順をしっかり記憶し、あとは覚えた手順通りやるだけだから。
その結果、他人から見たら複雑なことも、いとも簡単にできるようになったりする。
これは「職人芸」「名人芸」などと、もてはやされることが多いのだが、実は脳にとっては「楽」でしかない。
だっていくら複雑だとは言え、やってることは同じ事の繰り返しだから。
こういう場合、脳の前頭葉は休んでいる。
前頭葉は、新しいことを始めたり、失敗しないように注意深くやる時に働くので、同じ事を繰り返すときには働かない。
つまり傍から見て職人芸だとか、名人芸のように見えることができても、脳はどんどんボケてる事もあるわけだ。
だから自分のボケに気づくのは、失敗が続いて支障が出始めたときと、周囲の環境が変わったときくらいになるのだ。
仕事や環境が変わると、ボケに気づく
自分自身の衰えに気づくのは、できると思っていたことが、全然できなくなっているときだ。
昔は簡単にできたのに、今はもうできなくなっている。
失敗が続いたりすると、さすがに何かおかしいと思うし、仕事や職場を変わったりすると、立場が変わるので気づきやすい。
たとえば部署が変わったり転職すると、前の職場では他人任せだったことを、自分でやる必要も出てくるだろう。
そして自分でやってみたらできず、「こんなことができないのは、おかしい」などと思い始めるわけだ。
一方、地位が上がったためにボケに気づくということもあるようだ。
下っ端で毎日忙しくしているときは、五官を全部使って情報を集め、自ら動いて考えをまとめていた。
分からないことは先輩に聞いたり、得意先を回って先方の事情を調べたり、足で稼ぐと言うことも多かった。
しかし昇進して部下を持ったことで、自分でやらなくて済む事が増えると、今まで鋭敏だった感性が鈍ってしまう。
久々に最前線に出てみると、昔とは勝手が違っていて、「あれ、こんなに何にもできなかったっけ?」と、ようやく脳がボケていることに気づく。
ボケて得意先の話がわからない。
決断力もなくなっている、では、仕事に支障が出てしまう。
ところがそういう状態になっても、どうすれば能力が戻るのかがわからない。
そこでようやくボケ外来に電話を入れて、予約を取るという事になるらしい。
ボケの初期症状の例(再掲)
- 脳が働かず、何にもできなくなってしまう。
- 人に話しかけられたときに、うまく反応できない。
- 言葉がなかなか出てこない
- 思考がすぐに途切れてしまう。
- よく知っているはずの人や物の名前が出てこない
- 何かしようと思ったのに、それが思い出せない。
- 電話で人の話を聞いても、その内容がすぐに頭から抜け落ちる