年寄りが頑固なのは当たり前
ボケ症状は、高齢になるほど増える。
歳をとるとボケやすい理由は、大きく分けて二つあって、一つはもちろん「老化」だ。
老化によって脳の血管が弱くなり、脳に血液が行き渡らなくなって、ボケを起こしやすくなる。
高血圧になると、毛細血管に血が行かなくなるし、糖尿病では毛細血管が弱くなる。
その結果、血流量が減って、ダメになる部分ができてしまうわけだ。
そして年齢によるボケのもう一つの原因が、「学ばなくなる」ということだ。
前頭葉は、新しい事に反応しやすく、知っていることには反応しにくい。
若い頃には、見るモノも聴くモノも、知らないことばかりで新しかったので、前頭葉は活発に動いていた。
しかし歳を取るにつれて、知っているモノの方が多くなってしまい、新しいモノへの興味を失う。
というのもたいていのモノが、今まで見てきたモノの何かに似ており、理解の範疇に入ってしまうからだ。
こういう状態になると、前頭葉は活性化しないから、頭が徐々にボケ始めてしまうのだ。
特に生活が安定したり、地位が高くなって雑用をしなくなると危ない。
十分な資産を持ってしまえば、あとは自分のやりたいことだけ、やっていてもいいわけだし、必要に迫られて新しいことを学ぶ機会も減る。
他人と少々衝突したとしても、「まあいいか」とすぐに収まってしまうので、前頭葉を使わずに済む事ばかりになる。
これでは前頭葉の働きが鈍くなって、モノが考えられなくなるのも当然だ。
その結果、新しいことに順応できなくなり、頑固な年寄りがたくさん生まれるわけだ。
前頭葉は、感情の抑制も担っているので、ボケると頑固になるだけでなく、感情的になりやすくなるが、これもみんなボケのせいってことらしい。
熟練するとボケが始まる
仕事に熟練すればするほど、頭がボケると言うことも起こる。
これは、身についた作業を単に繰り返す時には、前頭葉をあまり使わないせいだ。
能力や技術を身につける過程では、注意しながら怖々やっているため、前頭葉は活発に動く。
前頭葉は「新しく何かを始める」とか、「注意深く何かを行う」とか、「悪いクセが出ないように抑える」などと言った目的の時に動くので、新しくモノを学ぶときに働くのだ。
しかし作業や手順に熟練してしまうと、何も気をつけなくてもできてしまう。
というのも同じ作業を何度も何度も繰り返していると、脳がその作業手順を記憶して、勝手に作業を進めてくれるようになるからだ。
自転車に乗ったり、車を運転したりするとき、最初はおっかなびっくりで乗ったり運転するが、何十時間か練習すると、だんだん楽になる。
これは操縦手順が少しずつ脳に刻まれて、意識せずともできるようになるからで、こういうのを「手続き記憶」と呼んだりする。
つまり練習や鍛錬が身につくと言うことは、手順が手続き記憶されるということだ。
ところがこれは、ボケ予防の観点から言うと、前頭葉をどんどん使わなくなることだ。
前頭葉が使われないとボケが進むから、何かに熟練すればするほど、頭がボケやすい状況に陥る。
前頭葉がボケれば柔軟性も無くなるし、感情も抑えられなくなるので、物事に熟練すればするほど、頑固で感情的な人間になってしまう。
逆に言うと、常に新しいことを学び続ける人だけが、柔軟でボケないって事かな。