BICSとCALP 2種類の言語能力
何を言えばいいのか、言葉に詰まるのは、ボケの始まりだ。
頭が真っ白になってしまい、何も言えなくなったりすると、ボケ始めているということらしい。
というのも会話能力というのは、意外にすぐ衰えるものだからだ。
たとえば営業の最前線でバリバリ働いていた人でも、昇進して最前線に出なくなると、流ちょうだった営業トークも消えてしまう。
そして取引先やお客さんの言葉に、すぐに応えられずにしどろもどろになる。
以前なら、クレームがあっても、すぐに対応して顧客に応えられたが、相手が満足するような答えが思いつかない。
これは客前に出る機会が少なくなったことで相手の意図を読み取る能力が、衰えてしまうかららしい。
そして適切な対応をするための情報処理力や決断力が鈍るかららしい。
というのも言語能力には、2つのレベルの能力があって、それぞれ脳の使い方が違うのだ。
たとえばカナダの学者ジム・カミンズは、バイリンガルの人を観察した結果、言語能力を2つに分類して、BICSとCALPと名付けている。
BICSとは、Basic Interpersonal Communication Skillsの略で、「基本的対人伝達能力」などと訳される。
これは幼い子供が使うような、話し相手が目の前にいないと、伝わらないレベルの言語能力だ。
会話を文字に起こしたときに、全く何の会話なのかわからないようなレベルの会話だと思えば良い。
一方、CALPとは、Cognitive Academic Language Proficiencyの略で、「認知的・学問的な言語能力」などと訳される。
これは目の前にいない人間にでも、何かを伝えられるレベルの言語能力で、文字に起こしても伝わるレベルの会話だ。
つまりジム・カミンズは、会話ができることと、モノを考えることとは、それぞれ別の言語能力だとしたわけだ。
会話があっても、ボケないとは限らない
カナダの心理学者ジム・カミンズは、二カ国語を話すバイリンガルの人が、さほど頭が良くないことに気づいた。
二カ国語を自由に話すと聞くと、よほど頭がいいんだろうなと思うが、実際にはそういうわけでもないらしい。
そこでいろいろ調べてみた結果、言語能力には2種類あると考え、BICSとCALPという名前をつけた。
BICSとは、相手が目の前にいて、身振り手振りなどで伝わるレベルの言語能力・会話力のことだ。
小学校低学年くらいまでの子供の話は、他人には全く伝わらないことが多いが、これは会話がBICSレベルだかららしい。
一方、CALPとは学問やビジネスで交わされる会話・言語能力だ。
CALPは基本的な用語を覚えた上で、仮説を立てるとか、推論するとか、評価するとか、一般化する・分類する…などといった「操作」がある言語能力だ。
もう少しわかりやすく書くと、今までに学んだ知識や経験から、モノを比べてみたり、仮の話をしたり、点数をつけてみたり、パターン化したり、似たものを集めてグループにしてみたりして、物事を考えるというのがCALPってことだ。
こういう様々な操作を行うことで、我々は物事を「認知」するのだという。
そしてこういう操作を行うのが、脳の前頭葉と言う部分で、側頭葉や頭頂葉や後頭葉も、様々な形で前頭葉と共に動く。
逆に言うと、こういう頭の使い方をしないと、CALP能力はドンドン鈍くなっていく。
たとえ毎日他人と会話するような仕事でも、こういう操作の必要が無い会話ばかりしていると、頭をあまり使わないから、ボケるって事らしい。