中鎖脂肪酸(MCT)とは
アルツハイマー病患者は、脳内インスリン濃度が低くて、ブドウ糖をエネルギーとして、うまく取り込んでいないらしい。
そこでブドウ糖に替わる脳のエネルギー源として、脂肪から作られるケトン体を、たくさん送り込めばどうか。
そういう認知症対策も出てきた。
このケトン体を増やす食餌療法が「ケトン食療法」と呼ばれるモノだ。
ケトン食では炭水化物を極端に減らし、野菜と肉や魚などのタンパク質を摂る。
それだけではエネルギー不足になるので、油を飲むという食事法だ。
ケトン食は元々、難治性てんかんの治療法として、100年以上前から行われている療法だ。
難治性てんかんの治療では、最長で約2年も炭水化物を断つというから、炭水化物無しでも実は生きられるらしい。
アトキンス式ダイエット法や、最近流行の糖質制限食の元祖みたいなもんだと思えば良い。
ただ、糖質制限しただけで、ケトン体が増えるわけではない。
というのも普通の脂肪を分解してケトン体を作るには何段階もあって、なかなか大変なのだ。
そこで食べるとすばやく血中ケトン体濃度が上がるMCTオイルやココナッツオイルに注目が集まった。
MCTオイルとは、中鎖脂肪酸(medium chain triglyceride)の頭文字をとったもので、中鎖脂肪酸を高濃度に含む油だ。
一方、ココナッツオイルとは、ココナッツを搾ってとった油で中鎖脂肪酸を60%くらい含み、ケトン体を増やすのに役立つ油だ。
この中鎖脂肪酸という油は、キャノーラ油やオリーブオイル等の油と比べて、長さが半分くらいしかない油で、普通の油や脂肪と違った特徴がある。
それで認知症対策として、注目され、様々な臨床実験も行われているらしい。
中鎖脂肪酸は、すぐにエネルギーになる
普通の脂肪や油は、学校で習ったとおり、いったん脂肪酸とグリセリンに分解され、リンパ管を通って静脈に入る。
血液は水性なので、普通の油(長鎖脂肪酸)は、そのままでは血管に入れない。
だからこうやって遠回りするわけだ。
ところが中鎖脂肪酸には親水性があって、小腸の毛細血管から門脈を通って、直接肝臓に運ばれ、ケトン体になる。
そのため、中鎖脂肪酸は、一般の長鎖脂肪酸と比べて、約5倍も速くエネルギーになるという。
そして一般の油と比べて、約10倍のケトン体を発生させるという。
また一般の血管には流れないので、コレステロール値も上げないのだという。
なので中鎖脂肪酸(MCTオイル)は、栄養不良の患者のエネルギー補給に、40年以上前から利用されているらしい。
因みに、MCTオイルやココナッツオイルを食べて、ケトン体が発生しているかどうかは、口臭や体臭で分かる。
というのもケトン体として、アセト酢酸と、3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸)、そしてアセトンの3つができるのだが、アセトンは体内で使われないので、肺から排出されるのだ。
アセトンは、マニキュア落とし(除光液)などに使われていて、ツーンとした臭いだ。
何も食べずに長時間労働したり、ダイエットや断食で口が臭くなるのは、脂肪が燃焼してケトン体ができて、不要なアセトンが放出されるってことだね。
妊婦や授乳中のお母さん、動き回っている子供なども、代謝が激しいので、アセトン臭が強いらしい。