言語聴覚療法(ST)とは
言語聴覚療法(ST)とは、頭と口を動かすリハビリだ。
認知症では、様々な原因で、人と会話することが難しくなったり、モノを飲み込めなくなったりする。
見当識障害では、時刻や自分のいる場所が分からなくなり、知り合いの顔も忘れてしまう。
そのため何を話せば良いのか、誰と話せば良いのか分からなくなり、会話するのもおっかなびっくりになる。
また「失語症」といって、言葉の意味がわからなくなり、話ができなくなる場合もある。
脳血管性認知症の場合、脳出血や脳梗塞によって言語領域が傷んでしまったり、言語サーキットがつながらなくなると、文字と言葉と意味が、結びつかなくなったりするのだ。
この場合、文字と言葉と意味を、一からまた学習していかなければならない。
最初は数字を使ったトレーニングから始め、日常生活で使われる言葉などを、もう一度脳に教え込むと言う作業が必要だ。
大の大人にアホみたいな簡単な言葉を尋ね、失われた言葉を一から覚えさせるだなんて、屈辱的なことかも知れないが、仕方ない。
というのも認知症では、脳が物理的に壊れているので、たとえ脳の神経細胞が回復したとしても、失われた記憶は回復しない。
失われた記憶はもう、二度と蘇らないので、最初から覚えなおすしかないわけだ。
一方、レビー小体型認知症(パーキンソン病)などでは、口やノドの筋肉がこわばってしまい、モノをうまく食べることが難しくなる。
特に食べ物を飲み込むことが難しくなり(嚥下障害)、食べた物をのどに詰まらせたりする。
声を出すのにも、モノを食べるのにも、口やノドの筋肉を使うので、これらがうまく動かせるようにするのも、言語聴覚療法の一つだ。
言語聴覚療法(ST)の3つの分野
言語聴覚療法(ST)は、認知症や事故による障害で、会話や口を動かすことが困難になった人のリハビリ法だ。
言語聴覚療法は、大きく分けて3つの分野に分かれる。
それは
- 高次脳機能訓練(失語症)
- 構音・発声訓練(構音障害)
- 摂食・嚥下訓練(嚥下障害)
まず高次脳機能訓練とは、失語症のためのリハビリだ。
失語症とは、文字と言葉と意味のつながりが分からなくなってしまう状態で脳の言語野(言語サーキット)の異常だ。
認知症で記憶力が悪くなったり、言葉が思い出せなくなったり、考えることが難しくなったりして、言葉が出てこない状態だ。
訓練としては、数字のカードを使ったゲームや、仮名のカードと絵やイラストのカードを使って、すりあわせ作業などをやる。
次の構音・発声訓練は、構音(こうおん)障害のためのリハビリだ。
好悪障害とは、口やノドの音声器官の障害で、言葉が出でにくくなる障害だ。
脳の言語領域は健常に働いているが、口やノドなどの音声器官がうまく動かず、それで会話などに支障が出る。
筆談や五十音表などを使えば、普通に会話ができるのだけれど、そういうコミュニケーションツールがないと、電話も使えないという障害だ。
大きく分けると次のような分類になる。
構音障害の分類
- 器質性構音障害…口やノドなどの形による発音障害。
- 運動障害性構音障害…口やノドの運動機能障害による発話障害。
- 聴覚性構音障害…聴覚障害による二次的な発音障害。
- 機能性構音障害…その他。
このリハビリは、姿勢の矯正や、唇の動かし方のトレーニングや、発声練習などが中心になる。
最後の摂食・嚥下訓練とは、嚥下障害のためのリハビリだ。
嚥下障害では、食べ物を飲み込むのが難しくなるため、ノドに詰めない食べ方など、様々な方法を学ぶ。