集中するとは、他の知覚情報をカットすること
世間的に、集中力があるのは、良いことだと言われる事が多い。
ところが何かに集中し続けていると、その影響で頭がボケやすくなる。
というのも前頭葉の中枢細胞には、情報を送ってくる神経細胞に対して、情報量を制限する機能があるからだ。
我々が何かに集中している時、雑音は殆ど耳に入ってこない。
そして腹が減らなかったり、痛みも感じなかったりする。
ところが集中が途切れてしまうと、周囲は雑音だらけだったり、えらく腹が減っていたり、ひどい痛みがあってビックリする。
こういうことが起こるのは、前頭葉の中枢神経から、五感を送ってくる神経に対して、送らせる情報量を制限できるかららしい。
たとえば集中してモノを見たいときには、「視覚情報を詳しく送れ」と命令する。
その一方で、聴覚神経や触覚神経に対して、「情報を送るな」と制限をかける。
こういう指令をトップダウン信号と呼ぶ。
トップダウン信号を使うことで、知覚神経の情報を制限して感度を落とすことができるわけだ。
なので本やマンガに熱中しているときは、かなり大きな音でも気がつかない。
腹が減っていても、身体が痛くても、夜になって周囲が暗くなっても、本やマンガを読み続けたりするのは、トップダウン信号によって、知覚神経が抑えられているかららしい。
集中したり熱中していたりすると、周囲に誰かがいるのに気づかなかったり、時間がたって暗くなっているのに、明かりをつけなかったりするのは、こういうわけだ。
逆に言うと集中すると言うことは、それ以外の情報をシャットアウトすることで、長時間こういう状態が続くと、脳がボケる原因になりかねないわけだ。
何かに集中したら、必ずそれを解除すべし
前頭葉の仕事は自己コントロールだ。
自己コントロールというのは、様々な情報を集め、次に自分がどうするかを決めて、それを実行するという仕事だ。
そのため、前頭葉の神経中枢には、脳全体から情報が集まってくる。
目・耳・鼻・口・皮膚を五官と言うが、五官から送られてくる様々な信号は、統合されて全て脳の前頭葉送られる。
また過去の記憶も引き出され、前頭葉に送られる。
これによって自分が持つ知識や経験と、今起こっている状況を照合したり比較したり、仮の話を考えたりして判断を下すわけだ。
ただし集まってくる情報にも、重要な情報と、そうでない情報がある。
たとえば目の前に危険が迫っているとき、腹が減っているという情報や、背中がかゆいという情報などは、要らない情報で邪魔なだけだ。
こういう要らない情報が送られてくると前頭葉は混乱して決められなくなる。
スピーチで頭が真っ白になって、しどろもどろになるというのも、前頭葉にいろんな情報が送られて、混乱してしまうかららしい。
そこで前頭葉の神経中枢は、欲しい情報の優先順位を決めて、トップダウン信号で情報を制限する。
たとえば我々は、勉強したり、ややこしい文章を書いたりするとき、テレビを消したり、耳栓をしたりして、邪魔になる情報をカットしようとする。
これに似たようなことを、前頭葉は自動的にやっているわけだ。
しかしこのトップダウン信号によって、脳の働きは偏ってしまうことになる。
というのも脳の中では、五官の情報の処理を、それぞれ別の部分で行っているため、使われない部分はずっと休みになるからだ。
そして使われない部分は徐々に衰え、その結果、周囲に誰かがいても気づかなかったり、後ろから声をかけられても気づかなくなる。
何かに集中すればするほど、使わない感覚・機能が衰えて、ボケが進行すると言うことらしい。
そのため、何かに長時間集中したら、散歩とか音読など、別の事を必ずやって、集中の解除を行う必要があるわけだね。