糖化反応で毛細血管と神経が傷む
認知症の予防やリハビリには、理学(りがく)療法・作業療法・言語聴覚療法の三つがある。
この中の理学療法とは、運動療法や電気療法、マッサージや温熱療法などを指すが、認知症の予防やリハビリには、主に運動療法が使われる。
ただ、運動療法と行ってもいろいろで、目的によって中身はかなり異なる。
糖尿病でも運動療法が行われるが、糖尿病の運動療法と、認知症の運動療法は、かなり違う。
というのも糖尿病の運動療法では、「血糖値をコントロールする」のが目的だから、有酸素運動が中心になる。
これは、糖尿病の運動療法の効果として挙げられている項目を見れば明らかだ。
糖尿病の運動療法の効果
- 血糖値を下げる
- 体重を減らす
- 心肺機能の強化
- 血圧を下げる
- 足腰を強くし、老化を防止する
- ストレス発散
血糖値が高いと、血液中のブドウ糖が、毛細血管のタンパク質と反応して、毛細血管が固くなったり脆くなったりする。
これを「糖化反応」と呼ぶが、高血糖による糖化反応によって、体中の毛細血管が固くなったり脆くなる。
その結果、
- 目の網膜の毛細血管がやられて失明
- 腎臓の毛細血管がやられて人工透析
- 手足の神経がやられて傷に気づかず壊死
- その他様々な血管の病気
そのため、とにかく血糖値を下げることが、糖尿病の運動療法の最大の目標なのだ。
糖尿病の運動療法は血糖値を下げるのが目的
糖尿病の運動療法の目的は、血糖値のコントロールだ。
血糖値が高くなると、体中で様々な問題を引き起こす。
というのも高血糖になると、ブドウ糖と毛細血管が糖化反応を起こしやすくなり、毛細血管が硬く脆くなるのだ。
その結果、眼球や腎臓がダメになって、失明したり人工透析を余儀なくされる。
また神経が糖化されると痛みを感じず、傷を負っても壊死するまで放置したりする。
糖尿病の診断基準となるHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)も、実は赤血球中のヘモグロビンが、ブドウ糖と糖化反応している度合いを示すものだ。
我々の身体のエネルギー源は、炭水化物から作られるブドウ糖と、脂肪から作られる脂肪酸やケトン体だが、眼球と赤血球はブドウ糖しか使えない。
脂肪酸は、細胞内のミトコンドリアという器官で、ATPというエネルギーに変えられるのだが、眼球や赤血球はミトコンドリアを持たないため、どうしても高血糖の影響を受けやすい。
そのため、赤血球のヘモグロビンの糖化度で、平均的な血糖値を判断できると言うことらしい。
だからHbA1cの数値が高ければ高いほど、体中の毛細血管や神経も同じように、やられていると考えれば良いらしい。
糖尿病の合併症を防ぐためには、血糖値を下げることが重要で、そのために運動療法が行われる。
つまり糖尿病の運動療法は、あくまでも血糖値を下げるためのモノだということだ。
糖尿病の運動療法の例(15分以上/1日おき)
- 速歩(はやあし)やジョギング
- サイクリング・自転車漕ぎ
- リズミカルな体操
- 水泳
- 踏み台昇降
運動強度は中程度運動で、「話をしながらできる強めの運動」。
また散歩のような軽い運動でも、血糖値を下げるのに効果があるので、食後1時間の血糖値が最も高くなる時に軽い運動することも重要だと言うことだ。