DHAとアラキドン酸は、脳の材料
脳に良い食べ物は意外なことに油(脂肪酸)だ。
油が脳に良いなんて、と思うが、脳細胞の細胞膜はリン脂質という、リン酸と脂肪酸(油)でできている。
そのため、油不足になると、神経細胞が再生できないのだ。
もちろん油なら何でも良いわけではない。
脳の神経細胞に必要なのは、DHA(ドコサヘキサエン酸)とアラキドン酸の2種類の油だ。
というのも脳のリン脂質の構成比は、一番多いのがDHA(17%)で、次がアラキドン酸(12%)となっていて、この二つが重要な役割を持っているからだ。
DHAとアラキドン酸不足が特に問題になるのが乳幼児の時期で、この二つの油が不足すると、発達不良が起こると考えられている。
乳幼児期は脳の神経細胞が爆発的に増える時期だが、材料のDHAとアラキドン酸は、まだ体内で合成することができない。
そのため食事でこれらの油を摂らないと、脳をつくる材料が足りなくなって、成長したくても成長できないわけだ。
そこで最近の粉ミルクには、必ずこの二つの油が配合されていて、発達不良が起こらないようにしている。
そして同じ事は、高齢者にも言えるらしい。
というのも歳をとるにつれて、体内のDHAとアラキドン酸が減ってしまうのだ。
DHAはαリノレン酸から合成できるし、アラキドン酸もリノール酸から合成できるが、歳をとると合成能力が落ちるらしい。
歳をとると食が細くなり、油を摂らなくなるせいもあるかも。
脳の神経細胞の材料となるDHAとアラキドン酸が減っていれば、脳細胞も再生しようがないからね。
神経新生・ニューロン新生とは
脳の神経細胞の数は、生まれたときが最多で、2歳頃には3分の1にまで減ってしまう。
そのため、かつて脳の神経細胞は、減っていく一方だと思われていた。
しかし多くの動物で脳の神経が新陳代謝していることが分かった。
そして人間でも脳の海馬歯状回で、神経細胞が更新されていることが分かった。
新しく脳の神経細胞ができることを、神経新生(ニューロン新生)と呼ぶが海馬には神経幹細胞というのがあって、そこから新しい神経細胞が生まれるらしい。
海馬というのは記憶を司る器官だから、神経新生が鈍くなると物忘れが増える、と言うことなのかもね。
そしてこの神経新生を促すのが、DHAとアラキドン酸という油だ。
神経細胞とそれを取り巻くグリア細胞は、神経幹細胞から分化するのだが、DHAは神経細胞の分化を促し、アラキドン酸は、神経細胞にエネルギーやアミノ酸を供給するアストロサイト(グリア細胞)の分化を促すらしい。
DHAやアラキドン酸は、αリノレン酸やリノール酸から合成されるが、全部がDHAやアラキドン酸にはならないので、DHAとアラキドン酸を直接食べた方が効率的かも。
因みにDHAは魚の油に含まれ、アラキドン酸は肉や卵に含まれる。
参考までに、DHAとアラキドン酸の体内での生成経路は以下の通りだ。