モノを見るには、脳が総動員される
モノを見る・観察するという作業は、脳の多くの部分を使う作業だ。
何かの音に反応して目を向ける場合、その音がどこからしているのか、目はキョロキョロして探す。
そして見えたもの瞬時に判断して、行動すべきことを判断して、それを実践に移すわけだから、かなりいろんな事を同時にやっている。
左右を見たり、上下を見たり、遠くの方を見たり、足元を見たり。
そこには様々な色のモノがあり、様々な形のモノがあって、その中から何かを見つけるわけだから、我々の脳は大忙しになる。
というのも目に入ったモノの位置情報と、色や形、大きさや質感と言った情報は、別々に分析されて認識されるからだ。
我々の脳というのは、空間に存在する物体を、位置・色・形・大きさ・動きなどという風に、バラバラに分析したあと、それをひとまとめにする。
詳しく書くと、目に入ったモノは、後頭葉の第一視覚野で捉えられる。
そして情報は背中側を伝わるwhere経路と、腹側を通るwhat経路を伝わっていき、最後に脳の前頭葉でまとめられる。
where経路は背側経路とも呼ばれるが、目の前にあるモノがどこにあって、どの方向に動いているかという情報を捉える。
この情報は後頭葉から頭頂葉の神経で分析して、前頭葉の背中側の神経細胞に届けられる。
もう一方のwhat経路は腹側経路とも呼ばれるが、形や色などの形状・色彩を側頭葉で分析し、その情報を前頭葉の内側の神経細胞に送る。
こういう風に二手に分かれた情報が、最後に前頭葉で統合されて、初めてモノが見えるわけだ。
ボンヤリ見るのと、興味を持ってみるのとでは、違う
モノを見る時、空間位置情報と、形や色などの形状情報は、脳の別の経路で分析される。
まず空間位置情報は、後頭部の第一視覚野から脳のてっぺんの頭頂葉で認識され、前頭葉の背中側に送られる。
これを「where経路」とか「背側経路」と呼ぶ。
一方、色や形状に関する情報は、後頭部の第一視覚野から、脳の側面側・側頭葉を通って分析され、前頭葉の腹側の細胞に送られる。
これは「what経路」とか、「腹側経路」と呼ばれる。
そして前頭葉で初めて、見たモノの位置や運動と色や形状が、前頭葉でまとめられる(統合という)。
たとえば「スズメが、右から左に飛んでいる」のが目に入ったとしたら、側頭葉でスズメの形や色が分析され、そして側頭葉にある記憶と照合して、「これはスズメだ」と判断される。
一方、背側経路の頭頂葉では、物体が右から左に飛んでいるのが分析される。
これが前頭葉で情報がまとめられ、「スズメが右から左に飛んでいる」という状況が理解できるというわけだ。
ただ、遠くを雀が飛んでいても、ありふれた光景で見慣れているなら、脳はさほど活発には動かない。
前頭葉が働くのは、あくまでも「意識して見る」時だけで、ただ目に入ってもダメらしい。
もちろん目の前をビュンと雀が飛んだり、白い大きな鶏でも飛んでいれば、「何事だ?」と、さすがに脳は働くだろうけどね。
毎日20分以上、周囲を観察しながら散歩するというのがボケに良いというのは、脳を広範囲に使う「見る」という作業と、散歩という運動による脳の刺激が、脳を活性化しやすいというってことだな。